30代IRの職務経歴書|差がつく書き方と実例
- 採用担当者が30代IR経験者の職務経歴書で実際に見ているポイント
- 「IR戦略の立案経験」「海外IR・統合報告書への関与」「組織への貢献」を伝えるための書き方
- 経験年数別(7〜8年・10年前後・プレイングマネージャー)の例文3パターン
- 大企業・中堅企業・IPO準備会社それぞれのIR経験の書き方の違い
- 書類が通らない人に共通するNGパターンと改善例4パターン
「IR担当として10年近く経験を積んできたのに、転職で書類が思うように通らない」30代のIR経験者からこの悩みはよく聞きます。
書類が通らない原因のほとんどは経験不足ではありません。30代になると「開示業務をこなしてきた事実」の羅列では評価が上がりにくくなり、「IR戦略をどう設計してきたか」「資本市場との対話品質をどう向上させてきたか」「組織のIR機能をどう強化してきたか」が問われるようになります。
この記事では、30代IR経験者が職務経歴書で差をつけるための書き方を、例文・NGパターン・ステップごとに具体的に解説します。
採用担当は何を見ている?
30代IR経験者の職務経歴書で、採用担当者が確認しているのは主に次の3点です。
| 観点 | 内容 |
| ① IR戦略の立案・設計経験があるか | 年間IR計画の立案・ターゲット投資家の設定・開示方針の策定など戦略レベルへの関与 |
| ② 投資家対話の質と幅があるか | 機関投資家・アナリスト・海外投資家との対話実績と深さ |
| ③ 転職理由と経験に一貫性があるか | なぜ今転職するのか、これまでの経験が次の職場でどう活かせるか |
よくある失敗(書類が通らない3つのパターン)
パターン①:20代と同じ「開示書類作成リスト」で終わっている
30代になっても「決算短信・有価証券報告書・統合報告書を作成しました」という業務の羅列だけを書いている職務経歴書は多いです。これらは20代の評価軸です。
30代では「どんなIR戦略のもとで・何を目指してその開示をしたか」「投資家フィードバックをどう開示改善に活かしたか」「組織のIR機能をどう強化したか」が問われます。
パターン②:転職理由が書かれていない
30代の転職では「なぜ今転職するのか」が採用担当者にとって重要な確認ポイントです。「より大規模な企業のIRを担当したい」「IPO準備企業でIR機能の立ち上げを経験したい」など前向きな転職理由を自己PR欄に書いてください。
パターン③:ESG・統合報告書への対応が書かれていない
30代IRの差別化ポイントのひとつが「ESG開示・統合報告書・TCFD/TNFD対応への深い関与経験」です。機関投資家のESGへの関心が高まっている中で、これらへの経験は30代IRの重要な専門性です。
書き方のポイント|30代IRならではの伝え方
ポイント①:代表的な取り組みを2件、深く書く
30代の職務経歴書では業務の網羅より「この取り組みをこの深さで担った」という深さを見せることが重要です。最も成果が出た・最も戦略的に関与した取り組みを2件選び、背景・アプローチ・成果をセットで書きます。
ポイント②:IR戦略・開示方針への関与を書く
「年間IR計画をどう設計したか」「ターゲット投資家をどう設定したか」「開示の優先課題を何に置いたか」という戦略レベルへの関与を書きます。担当者として意見を出した・提案した経験も書けます。
ポイント③:自己PR欄に転職理由を必ず入れる
30代の転職では自己PR欄の末尾に「なぜ今転職するのか・次の職場で何を実現したいか」を一文添えることが基本です。
IRならではの悩みに答える
「IPO準備のIR経験をどうアピールするか」という悩み
IPO準備段階のIR経験は「上場後のIRと何が違うのか」を採用担当者に伝えることが重要です。「主幹事証券・監査法人との連携」「ロードショーの企画・実施」「開示体制のゼロからの構築」「目論見書の作成」など、IPO特有の業務を具体的に書いてください。
「大企業から中堅・ベンチャーへの転職での書き方」という悩み
大企業でのIR経験を中堅・ベンチャーへの転職に活かす場合、採用担当者が知りたいのは「大企業の高品質なIR体制をどう小規模組織に応用できるか」です。「開示品質の水準設計」「投資家対話の体制づくり」「ESG開示の整備」など「仕組みをゼロから作る力」として整理してください。
例文
例①:経験7〜8年(30代前半)
東証プライム上場消費財メーカー(時価総額約5,000億円)のIR部(5名)にて、決算開示・機関投資家対応・統合報告書・ESG開示を担当。入社5年目以降はIR部内のシニア担当として後輩1名のOJTと開示方針の提案も担う。
【業務内容】
・決算短信・有価証券報告書・決算説明会資料の主担当作成
・機関投資家・アナリストとの個別ミーティング対応(年間約80件)
・統合報告書の企画・制作統括(デザイン会社・社内各部門との連携)
・ESG開示の整備(TCFD・GRI・SASB基準への対応)
・後輩IR担当1名のOJT・業務指導(入社5年目以降)
【実績】
・年間機関投資家・アナリストミーティング:約80件を主担当として対応
・統合報告書のリニューアルを主導し「日経統合報告書アウォード」銀賞を受賞
・TCFD対応開示の整備を主担当として完了・機関投資家からの開示評価が向上
・後輩の独り立ちまでの期間を6ヶ月 → 3ヶ月に短縮(OJTマニュアルの整備による)
【主な取り組み】
統合報告書のリニューアルでは「財務情報と非財務情報の接続」を設計思想として整備し投資家が戦略と成果の一貫性を理解できる構成にした。TCFD対応では「投資家が最も求めるシナリオ分析の開示」を優先課題として設定し社内の環境・リスク管理部門との連携体制を自ら構築した。後輩OJTでは「なぜこの情報を・どう開示するか」の思考プロセスを言語化したマニュアルを作成した。
自己PRでのアピールポイント
開示書類の主担当・投資家対話・ESG開示整備・後輩育成まで一貫して担ってきた経験がある。「投資家が本当に知りたいことから逆算して開示を設計する」という視点を持って取り組んでおり、次の職場でもIR機能の強化と資本市場との対話品質の向上に貢献したいと考えており今回の転職を決断した。
例②:経験10年前後(30代後半)
東証プライム上場テクノロジー企業(時価総額約3兆円)のIR部(8名)の副部長として、IR戦略の立案・海外IR統括・統合報告書・ESG開示・アナリスト対応を統括。
【業務内容】
・年間IR計画の立案・ターゲット投資家の設定・開示方針の策定
・海外機関投資家向けIRロードショーの統括(NY・ロンドン・シンガポール等、年2〜3回)
・決算説明会・スモールミーティング・個別ミーティングの統括(年間約200件)
・統合報告書・サステナビリティ報告書の制作統括
・部内4名のマネジメント・育成・業務設計
【実績】
・海外機関投資家保有比率を2年間で28% → 38%に向上(海外IR強化の成果)
・統合報告書が「日経統合報告書アウォード」金賞を2年連続受賞
・ESG評価スコア(MSCI:A→AA、Sustainalytics)が2年連続で改善
・アナリストカバレッジ数が4社増加(IR戦略的アプローチの強化による)
【主な取り組み】
海外IR強化では「どの投資家・アナリストに集中的にアプローチするか」のターゲティング戦略を設計し投資家データベースと株主構成の分析を組み合わせた優先度設定を実施した。統合報告書では「長期価値創造ストーリーの一貫性」を複数年にわたって強化し受賞につなげた。部内マネジメントでは「IRの品質を担保しながら若手が成長できる業務設計」を意識した。
自己PRでのアピールポイント
IR戦略の立案から海外投資家対応・統合報告書・ESG開示・組織マネジメントまで一貫して統括してきた経験がある。「資本市場と経営を接続するIRの本質的な役割」を常に意識して取り組んでおり、次の職場でもIR機能の戦略的な強化を担う立場で貢献したいと考えている。
例③:プレイングマネージャー経験あり
IPO後3年目の東証グロース上場SaaS企業(時価総額約500億円)のIR担当責任者(2名体制)として、IR機能の構築・上場後の開示体制整備・機関投資家対応・統合報告書の初回制作を主導。
【業務内容】
・上場後のIR体制の整備・開示プロセスの設計・標準化
・決算短信・有価証券報告書・決算説明会資料の統括
・機関投資家・アナリストとの個別ミーティング対応(年間約50件)
・統合報告書の初回制作(ゼロからの企画・制作統括)
・ESG開示の整備(TCFD基準への初回対応)
【実績】
・上場後2年間でアナリストカバレッジを2社 → 8社に拡大
・統合報告書を初回制作しIR評価機関から初年度で「優良開示企業」選出
・機関投資家保有比率を上場時から2年で12% → 24%に向上
・IR開示プロセスの標準化により決算発表時の作業工数を前年比30%削減
【主な取り組み】
IR体制の整備では「上場前のIPO準備IR」と「上場後の継続IR」の違いを整理し、長期投資家向けのストーリー構築を優先課題として設定した。アナリストカバレッジ拡大ではSaaS企業に詳しいアナリストへの積極的なアプローチを優先し、プロダクトの競合優位性を丁寧に説明する機会を設けた。統合報告書の初回制作ではSaaS企業特有のメトリクス(ARR・NRR・CAC・LTV)の開示を充実させた。
自己PRでのアピールポイント
IPO後のIR体制をゼロから構築した経験は、これからIPOを目指す・IR機能を強化したい企業において直接貢献できる希少な強みである。「IR機能の立ち上げ・整備・継続改善」を一気通貫で担ってきた経験を次の職場でも活かしたいと考えている。
書き方ステップ
① これまでのIR業務をすべて書き出す
担当した開示書類・投資家対応・イベント・社内連携業務・ESG対応を一覧化します。
② 代表的な取り組みを2件選んで深掘りする
最も成果が出た・最も戦略的に関与した取り組みを2件選び「業務内容・実績・主な取り組み」の3ブロックで整理します。数字(投資家ミーティング数・保有比率の変化・受賞歴等)を必ず入れてください。
③ IR戦略・開示方針への関与を整理する
年間IR計画の立案・ターゲット投資家の設定・開示内容の優先課題設定など戦略的な判断への関与を書き出します。
④ 転職理由を整理する
「なぜ今転職するのか」「次の職場で何を実現したいか」を一文で言語化します。自己PR欄の末尾に添えてください。
⑤ ESG・統合報告書・海外IRへの関与を整理する
30代の差別化ポイントになる専門領域の経験を書き出します。
⑥ 使用ツール・資格を整理する
Bloomberg・Excel(財務モデル)・証券アナリスト(CMA・CFA)・IRプランナー・TOEIC等を記載します。
⑦ 書式を確認する
全体はA4で2〜3枚にまとめてください。
NG例 → 改善例|通らない書き方の直し方
失敗①:開示書類リストで終わっている(業務内容・実績ブロックの書き方)
失敗②:転職理由が書かれていない(自己PRの書き方)
失敗③:IR戦略への関与が見えない(主な取り組みブロックの書き方)
失敗④:ESG・統合報告書への関与が書かれていない(業務内容・実績ブロックの書き方)
経験年数別アドバイス
経験3年未満(若手・担当者)
活動量(投資家ミーティング数・開示書類の作成本数)と自発的な改善エピソードを中心に書きます。成長の軌跡(担当範囲の拡大)も重要なアピール材料です。
経験3〜10年(中堅・専門担当)
IR戦略への関与・海外IR・統合報告書・ESG開示など専門性の深さを書きます。転職理由を自己PR欄に添え「なぜ今動くのか」を明確にすることが30代の書類通過率を上げる鍵です。
経験10年以上(ベテラン・シニア層)
IR戦略の統括・海外IR・組織マネジメント・経営層へのブリーフィングが評価の中心になります。
よくある質問
評価されます。「開示体制のゼロからの構築経験」「ロードショーの実施経験」「主幹事証券・監査法人との連携」は上場企業のIR担当者には持ちにくい希少な経験です。
海外機関投資家ミーティングの対応件数・ロードショーへの参加実績・英語開示資料の制作経験を具体的に書いてください。TOEIC等のスコアも記載してください。
「現在TCFD対応・統合報告書の制作を学習中」と記載できます。ESG分野は急速に変化しているため学習意欲を示すことが重要です。
30代であればA4で2〜3枚が目安です。直近3〜5年の経験を厚く書きそれ以前は概要のみにまとめてください。
まとめ
- 30代の評価軸は「開示業務の処理力」から「IR戦略の立案・資本市場との戦略的対話」に移る
- IR戦略の立案・ターゲット投資家の設定・開示方針への関与を具体的に書く
- 統合報告書・ESG開示・海外IR・TCFD対応など専門領域の経験を積極的に書く
- 転職理由は自己PR欄に必ず入れ前向きな文脈で表現する
- 「なぜこの開示内容・方法を選んだか」という戦略的思考のプロセスを書く
- Bloomberg・財務モデル・CMA/CFA・IRプランナーなどツールと資格を具体的に記載する
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