20代IRの職務経歴書|通過率を上げる実践的な書き方
- 採用担当者が20代IR経験者の職務経歴書で実際に見ているポイント
- 「IR業務の成果をどう数字にするか」「開示資料作成と投資家対応の書き方」という悩みへの対処法
- 経験年数別(1〜2年・3〜4年・5年前後)の例文3パターン
- 経理・財務・広報・経営企画からIRへの転職、またはIRから他職種への転職それぞれの書き方
- 書類が通らない人に共通するNGパターンと改善例4パターン
「IR業務の経験をどう職務経歴書に書けばいいかわからない」20代のIR担当経験者から、この悩みはよく聞きます。
書類が通らない原因のほとんどは、経験の浅さではありません。「開示資料を作成しました」「機関投資家対応をしました」という業務の羅列で終わってしまい、採用担当者に「この人が入ったら何ができるか」が伝わらないことが原因です。IRは直接的な成果数字が出にくい職種ですが、開示書類の品質・投資家ミーティング数・情報開示の改善実績など書ける数字は多くあります。
この記事では、20代IR経験者が職務経歴書の通過率を上げるための書き方を、例文・NGパターン・ステップごとに具体的に解説します。
採用担当は何を見ている?
20代IR経験者の職務経歴書で、採用担当者が確認しているのは主に次の3点です。
| 観点 | 内容 |
| ① どんなIR業務を担当してきたか | 開示書類(決算短信・有価証券報告書・統合報告書等)・投資家対応・決算説明会・アナリストミーティング等の担当業務の種類と深さ |
| ② 数字で示せる規模感・改善実績があるか | 年間投資家ミーティング数・開示書類の作成本数・開示改善の取り組み内容 |
| ③ 自分から考えて動いた経験があるか | 開示内容の改善提案・新しい開示フォーマットの導入・投資家からのフィードバックを活かした改善など自発的な貢献 |
よくある失敗(書類が通らない3つのパターン)
パターン①:業務の羅列で終わっている
「決算短信・有価証券報告書の作成・機関投資家対応・決算説明会の運営を担当していました」業務の幅は伝わりますが「それで何ができる人なのか」が一切伝わりません。
業務の種類に加えて「何件対応したか」「どんな工夫をしたか」「どんな改善が実現したか」をセットで書くことで初めて経験の中身が見えてきます。
パターン②:財務・会計の知識が書かれていない
IR担当には財務諸表の読解力・会計知識・資本市場の理解が求められます。「どの程度の財務知識を持っているか」「Excelでの財務モデル作成経験があるか」「証券アナリスト(CFA・CMA等)の資格があるか」といった情報が書かれていない職務経歴書は、IR担当としての基礎力が判断できません。
パターン③:投資家・アナリストとの対応経験が見えない
IRの核心は「資本市場との対話」です。機関投資家・アナリスト・個人投資家とのコミュニケーション経験の有無と深さが採用担当者の重要な確認ポイントです。「年間○件の投資家ミーティングに対応」「アナリストからの質問への対応を主担当として担当」といった情報を必ず書いてください。
書き方のポイント|20代IRならではの伝え方
ポイント①:会社規模・IR体制・担当業務の範囲を最初に書く
IRの職務経歴書では冒頭に「どんな会社の・何名体制のIR部門で・どんな業務を担当したか」を簡潔に示すことが重要です。上場市場(東証プライム・スタンダード等)・時価総額・IR部門の規模も明記してください。
ポイント②:開示書類の種類と関与深度を書く
決算短信・有価証券報告書・統合報告書・決算説明会資料など担当した開示書類の種類と「主担当として作成したか・上位者のサポートとして関与したか」を明確に書きます。関与深度の違いで評価がまったく異なります。
ポイント③:「なぜこの開示方法を選んだか・何を改善しようとしたか」を書く
IRの評価ポイントは「開示業務をこなす力」だけでなく「投資家に伝わる開示を設計する思考力」です。「投資家からのフィードバックを受けて開示内容を改善した」「統合報告書のストーリー設計を自分で提案した」という自発的な改善行動を書くことで差がつきます。
IRならではの悩みに答える
「IR成果が数字にしにくい」という悩み
IRの成果は株価・機関投資家の保有比率・アナリストカバレッジ数など測定できる指標があります。ただしこれらは直接コントロールできない外部要因も大きいため職務経歴書での記載は慎重に行ってください。代わりに「年間投資家ミーティング数○件」「決算説明会参加者数○名」「アナリストカバレッジ数○社」「統合報告書のページ数・受賞歴」など活動量・品質を示す数字で代替してください。
「経理・財務出身でIRに転職した場合の書き方」という悩み
経理・財務からIRへのキャリアチェンジは珍しくありませんが職務経歴書では「財務知識を活かしてIR業務をどう担当してきたか」の接続を明確にする必要があります。「財務諸表作成の経験を活かして決算開示資料の数値部分を主担当として担当した」という形で接続を書いてください。
例文
例①:経験1〜2年(若手・第二新卒)
東証プライム上場メーカー(時価総額約3,000億円)のIR部(4名)にて、決算開示書類の作成補助・投資家対応のサポート・IR資料の翻訳(日英)を担当。
【業務内容】
・決算短信・有価証券報告書の数値集計・資料作成補助
・決算説明会の運営サポート(会場設営・Q&A記録・資料配布)
・機関投資家ミーティングの日程調整・資料準備・議事録作成
・IR資料の日英翻訳(決算短信英訳・プレスリリース英訳)
・IR情報開示サイトのコンテンツ更新・管理
【実績】
・年間機関投資家ミーティング:90件(国内60件・海外30件)のサポート対応
・決算説明会:年4回の運営サポート(参加者平均120名規模)
・日英翻訳:年間約40本のIR資料翻訳を担当(TOEIC 875点)
・IR情報開示サイトの更新を年間80件以上担当しエラーゼロを継続
【主な取り組み】
機関投資家ミーティングの議事録作成では「投資家からの質問パターン」を類型化して上長に提案し、よくある質問への標準回答フォーマットの整備に貢献した。IR情報開示サイトの更新では「更新漏れ・タイプミス」防止のためのチェックリストを自分で作成し上長に採用された。日英翻訳では「日本語の会計用語と英語の表現のズレ」を自分でリスト化しチームの翻訳品質向上に貢献した。
自己PRでのアピールポイント
IR業務の補助として幅広く関与しながら「なぜこの情報を・どう伝えるか」を常に考えて動いてきた。翻訳力と情報開示への正確性へのこだわりを次の職場でも発揮したいと考えている。
例②:経験3〜4年(中堅手前)
東証プライム上場IT企業(時価総額約1,500億円)のIR室(3名)にて、決算開示書類の主担当・機関投資家対応・統合報告書の制作を担当。
【業務内容】
・決算短信・有価証券報告書・決算説明会資料の主担当作成
・機関投資家・アナリストとの個別ミーティング対応(年間約60件)
・統合報告書の企画・制作統括(デザイン会社との連携)
・ESG情報開示の整備・TCFD対応の資料作成
・社内各部門からの情報収集・経営層へのIR情報の報告
【実績】
・年間機関投資家・アナリストミーティング:約60件を主担当として対応
・統合報告書のリニューアルを主導し「日経アニュアルリポートアウォード」奨励賞を受賞
・TCFD対応の開示整備を主担当として完了し、ESG評価スコアが前年比向上
・有価証券報告書の記載内容の充実化(前年比ページ数+20%・事業リスクの記載を詳細化)
【主な取り組み】
統合報告書のリニューアルでは「投資家が最も知りたい情報は何か」を投資家ミーティングでのフィードバックから逆算して構成を設計した。機関投資家対応では「よくある質問と最新の経営課題への回答の整合性」を毎回更新するQ&Aデータベースを管理した。TCFD対応では社内の環境担当部門と連携しデータ収集体制を構築した。
自己PRでのアピールポイント
開示書類の主担当として品質向上と投資家対話の充実を両立してきた経験がある。「投資家が本当に知りたいことは何か」を常に起点に置いた開示設計の姿勢が強みであり、次の職場でも資本市場との対話品質の向上に貢献したいと考えている。
例③:経験5年前後(20代後半)
東証プライム上場製薬会社(時価総額約8,000億円)のIR部(6名)にて、決算開示・海外IR・統合報告書・ESG開示を担当。IR部内の若手リードとして後輩1名のOJTも担当。
【業務内容】
・決算短信・有価証券報告書・決算説明会資料の主担当作成
・海外機関投資家向けIRロードショー(年2回・NY・ロンドン等)の企画・対応
・統合報告書・ESG報告書の制作統括
・アナリストとの個別ミーティング対応・レポート内容の確認
・後輩IR担当1名のOJT・業務指導(入社4年目以降)
【実績】
・年間機関投資家・アナリストミーティング:国内80件・海外40件(計120件)を主担当として対応
・統合報告書が「日経統合報告書アウォード」金賞を受賞(リニューアル3年目)
・海外機関投資家保有比率が2年間で18% → 25%に向上(ロードショー強化の成果)
・ESG評価スコア(MSCI・Sustainalytics)が2年連続で改善
【主な取り組み】
海外IRロードショーでは「海外投資家が日本企業に対して最も懸念する論点(ガバナンス・資本効率・成長戦略)」を事前にリサーチし説明資料をカスタマイズした。統合報告書のリニューアルでは「財務情報と非財務情報の接続」を設計思想として整備し読み手に戦略と成果の一貫性が伝わる構成を作った。後輩OJTでは「なぜこの情報を・どう開示するか」の思考プロセスを言語化して伝えることを重視した。
自己PRでのアピールポイント
国内外の機関投資家対応・統合報告書の制作統括・ESG開示整備と海外IRを含む幅広いIR業務を経験してきた。「投資家との対話を通じて開示品質を継続的に向上させる」ことを一貫したテーマとして取り組んできた経験を次の職場でも活かしたいと考えている。
書き方ステップ
① これまでのIR業務をすべて書き出す
担当した開示書類・投資家対応・イベント・社内連携業務を一覧化します。「アピールになるか」はこの段階では考えなくてOKです。
② 行動量の数字を探す
年間投資家ミーティング数・決算説明会参加者数・開示書類の作成本数・翻訳した資料数など活動量を示す数字を洗い出します。
③ 成長の軌跡を時系列で整理する
入社直後・1年後・2〜3年後などで担当業務の範囲・関与深度がどう変わったかを整理します。「最初は補助 → 1年後に主担当 → 2年後に海外IR対応も担当」という成長の流れは20代の大きなアピール材料です。
④ 「なぜこの開示内容・方法を選んだか」を1件以上言語化する
開示書類の改善提案・投資家フィードバックの活用・ESG開示の強化など自発的な改善行動と「なぜそうしたか」を言語化します。
⑤ 財務知識・資格を整理する
Excel(財務モデル)・証券アナリスト(CMA・CFA)・TOEIC・IRプランナー等の資格・スキルをスキル欄に記載します。
NG例 → 改善例|通らない書き方の直し方
失敗①:業務の羅列で終わっている(業務内容ブロックの書き方)
失敗②:財務知識・資格が書かれていない(スキル欄の書き方)
失敗③:投資家対応の深さが見えない(業務内容・実績ブロックの書き方)
失敗④:自発的な改善経験が書かれていない(主な取り組みブロックの書き方)
経験年数別アドバイス
経験3年未満(若手・第二新卒)
業務の規模感(投資家ミーティング数・開示書類の作成本数)と「自分から考えて動いたエピソード」を中心に書きます。開示の改善提案・翻訳の品質向上・チェックリストの整備など小さな改善でも自発的な行動は評価材料になります。成長の軌跡(担当範囲の拡大)を時系列で示すことも重要です。
経験3〜10年(中堅・専門担当)
開示書類の主担当経験・投資家対応の質と量・ESG/統合報告書への関与などを書きます。転職理由を自己PR欄に添えてください。
経験10年以上(ベテラン・シニア層)
IR戦略の立案・海外IR統括・経営層へのブリーフィング・組織マネジメントが評価の中心になります。
よくある質問
通ります。「どんな補助業務を担当したか」「担当した開示書類の種類と件数」「上長の指示を受けながら何を工夫したか」を具体的に書くことで評価されます。成長速度と自発的な姿勢を示してください。
必須ではありませんが取得していれば積極的に書いてください。資格がない場合は「現在CMA取得に向けて学習中」と添えることで学習意欲を示せます。IRプランナー資格も有効です。
TOEICスコア・海外投資家ミーティングの対応件数・英訳した資料の種類と本数を具体的に書いてください。「英語でのQ&A対応経験あり」という一文も加えると伝わりやすくなります。
「財務諸表の深い理解を活かした開示資料の数値精度の高さ」と「財務の実務経験から生まれる投資家目線での開示設計力」を前面に出してください。経理・財務経験はIR担当として希少な強みです。
20代であればA4で2枚程度が目安です。開示書類の作成実績・投資家対応件数・自発的な改善エピソードを具体的に書くことで2枚程度になります。
まとめ
- 採用担当者は「業務の幅」より「開示書類の関与深度・投資家対応件数・自発的な改善行動」を見ている
- 年間投資家ミーティング数・開示書類の作成本数・決算説明会参加者数など活動量の数字を入れる
- 「なぜこの開示内容・方法を選んだか」という改善思考のプロセスを書く
- 財務知識(Excel・財務モデル)・資格(CMA・CFAなど)・語学力(TOEIC)を具体的に記載する
- 開示書類の「主担当として作成したか・補助として関与したか」を明確に分けて書く
- 成長の軌跡(担当範囲の拡大・関与深度の深まり)を時系列で示す
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