IRの職務経歴書の書き方|採用担当が見るポイントと例文
- 採用担当者がIR担当者の職務経歴書で本当に見ているポイント
- 決算説明会・アナリスト対応・統合報告書作成など業務別の書き方
- 数字が出にくいIR職で「実績」をどう表現するか
- 書類が通らないIR担当者に共通する失敗パターン
- 経験年数別(若手・中堅・ベテラン)のアピールポイントの違い
- NG例・改善例つきで今日から使える書き方を解説
「IR業務は幅広いのに、何をアピールすればいいかわからない」「数字で実績を出しにくい職種だから、職務経歴書が薄くなってしまう」IR担当者の転職活動でよく聞く悩みです。決算説明会の運営からアナリスト対応・統合報告書の制作まで、幅広い業務を担ってきたにもかかわらず、それを採用担当者に伝わる言葉に変換することに苦労している方がほとんどです。
書類が通らない原因の多くは、「何をしたか」は書けていても「どんな規模の会社で・どんな投資家層を相手に・どう貢献したか」が見えていないことにあります。採用担当者はIRの職務経歴書を通じて「資本市場と経営をつなぐ役割を担える人か」「財務・会計の知識と対外発信力を両立できるか」を判断しています。
この記事では、IR担当者が転職活動で使える職務経歴書の書き方を、具体的な例文・NG例・経験年数別のアドバイスとあわせて解説します。
採用担当は何を見ている?
IR担当者の採用担当者が職務経歴書で確認しているのは、主に次の3点です。
| 観点 | 内容 |
| どの業務領域を担当してきたか | 決算説明会・アナリスト対応・個人投資家向けIR・統合報告書・開示資料作成・ESG対応など、担当領域の幅と深さを確認している |
| どんな規模・業種の会社でIRを担ってきたか | 時価総額・投資家構成(機関投資家比率・海外投資家比率)・上場市場などによってIRの難易度と求められるスキルが異なるため重視される |
| 財務・会計の知識と対外発信力を両立できるか | 決算数値の理解力・経営陣との連携・英語対応力・開示資料の品質を見ている |
よくある失敗(書類が通らない人に共通する3つのパターン)
パターン①:業務の列挙で終わっていて貢献が見えない
「決算説明会の運営・アナリスト対応・統合報告書の作成・適時開示の管理」と並べるだけでは、採用担当者には実務の深さが伝わりません。どんな規模の会社で・何名の投資家・アナリストを相手に・自分がどの範囲を主導したかが書かれて初めて、評価の材料になります。
パターン②:「関与した」「サポートした」で役割が曖昧になっている
「決算説明会の準備をサポートしました」「アナリスト対応に関与しました」という記述では、主導したのか補助したのかが判断できません。「説明会資料の作成を主担当として実施」「アナリストからの質問対応の窓口を単独で担当」のように、自分の役割の深さを明確にすることが重要です。
パターン③:数字の記載がなく規模感が伝わらない
IRは「数字で実績が出にくい職種」と思われがちですが、「対応した機関投資家・アナリスト数」「決算説明会の参加者数」「統合報告書の制作ページ数」「適時開示の件数」「英語対応した説明会の回数」など、数字は必ず存在します。規模感を示す数字を入れることで、業務の密度と難易度が伝わります。
書き方のポイント|IRならではの伝え方
ポイント①:担当業務を「対象別」に整理する
IRの業務は「機関投資家向け」「個人投資家向け」「アナリスト向け」「ESG・海外投資家向け」など対象によって性質が大きく異なります。担当してきた対象を整理して書くことで、採用担当者が「自社のIRニーズと合うか」を判断しやすくなります。
ポイント②:「制作」か「運営」か「渉外」かを明確にする
IR業務は「資料制作(決算資料・統合報告書・適時開示)」「説明会・イベント運営」「投資家・アナリスト渉外」の3種類に大別されます。自分がどの比重で担ってきたかを明確にすることで、採用担当者が業務の深さを正確に評価できます。
ポイント③:英語対応力・ESG対応の経験を明記する
英語での投資家対応・英文開示資料の制作・海外ロードショーへの参加・ESGレーティング機関への対応などの経験は、IR担当者として差別化できる重要なスキルです。「英語での個別面談を年間○件対応」「MSCI・FTSE等のESGレーティング機関への情報提供を主担当」のように具体的に書きましょう。
IRならではの悩みに答える
「IR業務は機密情報が多く、何を書いていいかわからない」
未公表の経営計画・M&A案件・業績予想の詳細は記載を避けるべきですが、「業務の性質・担当した投資家の規模・説明会の回数・自分の役割」は書けます。「四半期ごとの決算説明会(参加者約200名)の資料作成・運営を主担当として実施」「機関投資家向け個別面談を年間約80件コーディネート」のように、業務の規模と自分の役割を中心に書きましょう。
「証券会社・アナリスト出身でIRが未経験の場合、どうアピールする?」
アナリスト経験者は「投資家・アナリストが何を知りたいかを理解している」「財務分析・バリュエーションの知識がある」「資本市場の動向を読む力がある」という強みを持ちます。「アナリストとして○社の企業調査を担当してきた経験から、投資家の視点でIR資料を設計できる」という切り口でアピールすると、採用担当者に転職の必然性が伝わります。
例文
例①:IR担当(経験3年・若手)
東証プライム上場の食品メーカー(時価総額約800億円)のIR部門(3名体制)に所属。決算説明会の準備・適時開示の管理・個人投資家向けIRイベントの運営を担当。
【業務内容】
・四半期決算短信・決算説明会資料の作成補助・校正
・適時開示資料(業績修正・人事・契約締結等)の作成・提出管理(年間約40件)
・個人投資家向けIRイベント(年2回・参加者各約150名)の企画・運営
・アナリスト・機関投資家からの問い合わせ対応の一次窓口
・IRサイトのコンテンツ更新・管理(年次報告書・財務データのアップロード)
・株主総会の準備補助(招集通知の校正・当日運営のサポート)
【実績】
・適時開示の提出管理を主担当として担い、3年間でリーガルチェックを含む提出期限の遵守率100%を維持
・個人投資家向けIRイベントの企画を刷新し、参加者アンケートの満足度スコアを前回比15ポイント改善
・IRサイトのコンテンツ整理を提案・実施し、投資家からの「資料が見つけやすくなった」という問い合わせが減少
【主な取り組み】
適時開示の管理では、各案件の担当部門・法務・経営企画との調整スケジュールを一元管理するExcelシートを独自に整備し、提出期限の管理漏れをゼロに抑えた。個人投資家向けイベントでは、参加者アンケートの自由記述を前回分から分析し、「社長のメッセージをもっと聞きたい」「製品の現物を見たい」というニーズを発見。Q&A時間の延長と製品展示コーナーの設置を提案・実現した。
自己PRでのアピールポイント
正確な情報管理と投資家目線のコンテンツ改善の両方に取り組んできた経験がある。「開示の品質を守りながら、投資家に伝わるIRを実践する」姿勢を次の職場でも発揮し、資本市場との信頼関係構築に貢献したい。
例②:IR・SR担当(経験7年・中堅)
東証プライム上場のIT企業(時価総額約3,000億円・機関投資家比率約55%)のIR部門(5名体制)に所属。機関投資家・アナリスト向けIRと株主総会対応(SR)を専任で担当。英語での投資家対応も担当。
【業務内容】
・決算説明会(年4回・参加者約300名)の資料作成・当日運営・Q&A対応サポート
・機関投資家・アナリストへの個別面談のコーディネート・同席(年間約120件)
・英語での海外投資家対応・英文開示資料(決算サマリー・プレスリリース)の翻訳・校正
・ESGレーティング機関(MSCI・FTSE等)への情報提供・評価改善対応
・株主総会の招集通知作成・議決権行使助言会社(ISS・Glass Lewis)への対応
・アナリストレポートの収集・分析・社内共有(月次)
【実績】
・機関投資家向け個別面談を年間120件コーディネートし、海外投資家比率が2年間で18%から27%に向上
・ESG対応の強化を主導し、MSCIレーティングがBBからAに格上げ(2年間で達成)
・英文決算サマリーの制作プロセスを改善し、決算発表から英文資料公開までのリードタイムを5日から2日に短縮
・アナリストカバレッジ数が2年間で8社から13社に拡大(IR活動の強化による)
【主な取り組み】
海外投資家比率の向上に向けて、ニューヨーク・ロンドンへのロードショーを年1回から年2回に増やすことを提案・実現した。ESG対応では、MSCIの評価項目を詳細に分析し、自社のギャップを経営企画・サステナビリティ部門と連携して埋めるロードマップを作成した。英文資料の制作では、翻訳会社との連携フローを整理し、修正回数を削減することでリードタイムの短縮を実現した。
自己PRでのアピールポイント
機関投資家・アナリスト・海外投資家・ESGレーティング機関と幅広いステークホルダーに対応してきた経験がある。「投資家が何を知りたいか」を理解しながら、開示の質と対話の密度を高めてきた実績を次の職場でも活かしたい。
例③:IR部長・管理職(経験15年・ベテラン)
東証プライム上場の総合商社(時価総額約8,000億円)のIR部長として勤務。IR部門8名のマネジメントと、全社のIR戦略の立案・推進を担当。CFO・経営陣との連携を主導。
【業務内容】
・IR戦略の立案・年間IR計画の策定・経営陣への報告
・IR部門8名のマネジメント(目標設定・評価・育成)
・CFO・社長との決算説明会・個別面談への同席・質問対応の準備
・統合報告書(100ページ超)の制作総責任者(外部デザイン会社・印刷会社との連携)
・海外機関投資家向けロードショーへの同行(年2回・NY・ロンドン・シンガポール)
・取締役会への株主動向・アナリスト評価のレポート(四半期ごと)
【実績】
・IR戦略の見直しを主導し、機関投資家との対話件数を年間150件から280件に拡大(3年間)
・統合報告書の品質向上を推進し、日経アニュアルリポートアワードで優秀賞を受賞
・ESG・サステナビリティ情報の開示強化を主導し、海外機関投資家比率が3年間で22%から35%に向上
・IR部門の育成体制を整備し、部員全員が個別面談を単独対応できるレベルに引き上げ
【主な取り組み】
IR戦略の見直しでは、アナリストカバレッジ・投資家構成・株価パフォーマンスを3年間分析し、「成長ストーリーの伝え方」と「対話の頻度と質」の2点を改善テーマとして設定した。統合報告書の品質向上は、外部の投資家モニタリング調査を導入して「読んでほしい投資家に刺さっているか」を定量的に評価する仕組みをつくった。部員の育成では、個別面談へのOJT同席からフィードバック、単独対応、フォローの4ステップで習熟度を管理し、全員の自立化を2年間で実現した。
自己PRでのアピールポイント
IRの実務から、IR部門のマネジメント・IR戦略の立案・経営陣との連携まで幅広く担ってきた。「投資家との対話を通じて企業価値を高める」というIRの本質的な役割を体現してきた経験を、次の職場でもIR責任者として活かしていきたい。
書き方ステップ
① これまでの担当業務(開示・説明会・投資家渉外・ESGなど)と、各業務での自分の役割(主担当・補助・管理)をすべて書き出す
② 数字になるものを探す(説明会参加者数・個別面談件数・アナリストカバレッジ数・適時開示件数・英語対応件数・ESGレーティングの変化など、守秘義務に触れない範囲で概数で書く)
③ 業務内容・実績・主な取り組みの3ブロックに分けて整理する(業務内容は「何をどの役割で担ったか」、実績は「規模と成果の数字」、主な取り組みは「なぜその成果が出たか・どんな判断をしたか」)
④ 応募先の会社規模・投資家構成・求める人物像に合わせてアピール軸を絞り込む(海外投資家比率が高い会社なら「英語対応・ロードショー経験」、ESG重視なら「ESGレーティング対応・統合報告書の制作実績」を前面に出す)
NG例 → 改善例|通らない書き方の直し方
失敗①:業務の列挙で終わっていて貢献が見えない
失敗②:役割が「関与した」で曖昧になっている
失敗③:数字がなく規模感が伝わらない
失敗④:自己PRが抽象的で終わっている
経験年数別アドバイス
経験3年未満(若手・担当者)
「担当した業務の種類と規模」と「正確な情報管理・スケジュール管理の実績」が評価のポイントです。主担当でなくても「適時開示の提出管理を単独で担当」「説明会資料の校正・データ更新を主担当」など、自分が手を動かした部分を具体的に書くことが重要です。英語対応・FP資格・証券アナリスト(CMA)の勉強状況もあれば記載しましょう。
経験3〜10年(中堅・専門担当)
「投資家渉外・英語対応・ESG対応のいずれかで主担当として推進した実績」が評価の軸になります。機関投資家との個別面談件数・アナリストカバレッジ数・海外投資家対応の経験を具体的な数字とともに書きましょう。証券アナリスト(CMA)・IR資格(日本IR協議会認定IR士)などの資格があれば必ず記載してください。
経験10年以上(ベテラン・リーダー層)
IR部門のマネジメント・IR戦略の立案・CFO・経営陣との連携・統合報告書の制作総責任者としての経験が最大のアピールポイントです。「部員数・対話件数の拡大・ESGレーティングの改善・海外投資家比率の向上」など、組織全体のIR力を高めてきた実績を中心に書きましょう。直近5年以内の情報を重点的に記載し、古い情報は概要にとどめることが読みやすさのポイントです。
よくある質問
有利です。特に証券アナリスト(CMA)はIR担当者として財務・バリュエーションの専門知識を持つ証明になります。日本IR協議会認定IR士も業界内での専門性の証明として有効です。資格欄に記載した上で、「どの業務でその知識を活かしたか」を職務経歴の中で示しましょう。
会社の投資家構成や海外投資家比率によって異なります。英文開示資料のチェックレベルなら「ビジネスレベルの読み書き」が目安、海外投資家との個別面談を単独対応するなら「ビジネス英会話レベル」が求められます。TOEIC・TOEFLのスコアを記載した上で「英語での投資家対応件数」を合わせて書くと実務レベルが伝わります。
上場企業へのIPO準備・海外上場対応の経験があれば高く評価されます。未上場企業での経営企画・財務・投資家向け資料制作の経験も、IR担当としての素地として評価されることがあります。「なぜIRを志望するか」の動機を明確に書きましょう。
可能です。IRで培った「財務分析力」「経営陣との連携経験」「資本市場の理解」は経営企画・財務に直接活きます。転職先が求めるスキルと自分のIR経験をつなぐ言葉を自己PR欄で書きましょう。
経験年数が3年未満であれば2枚、5年以上であれば2〜3枚が目安です。担当業務の種類・投資家対応の規模・開示実績など、IR業務の核心情報を優先して記載しましょう。
まとめ
- 採用担当者は「担当業務の種類・投資家の規模・役割の深さ・成果」をセットで見ている
- 説明会参加者数・個別面談件数・適時開示件数・ESGレーティングの変化など、数字になるものは必ず入れる
- 「関与した」「サポートした」ではなく「主担当として推進した」という表現で役割を明確にする
- 英語対応・ESG対応・統合報告書の制作経験は差別化できる重要なスキルとして積極的に記載する
- 経験年数に応じて「正確な管理と開示品質」「投資家渉外と英語対応」「IR戦略とマネジメント」を使い分ける
- NG例に共通するのは「列挙・役割の曖昧さ・数字のなさ」の3パターン
IRの経験は正しく書けば必ず評価されます。まずは担当してきた業務の種類・投資家対応の件数・開示資料の実績を書き出すところから始めてみてください。

